黒川 智恵美

2016年10月24日

黒川 智恵美 (Chiemi Kurokawa)

2011年4月博士課程前期入学、2013年3月博士課程前期修了

修士論文タイトル:モロッコ農村部における学校教育制度と村民のライフコース -エルラシディア県ハミリヤ村の女子教育に着目して-

 

日下部ゼミでは、先生の専門である南アジアの研究を行う生徒はもちろん、私のように他の地域を研究している学生もいます。留学生も多く、様々なバックグランドを持った学生が研究について意見を出し合ったり、また一緒に食事を楽しんだりと広島大学での院生生活を送っています。日下部ゼミの学生で共通することは、全員がフィールドに出て調査を行い生の声をデータとして持ち帰り、論文にまとめることです。ここでは修了生からのメッセージとして私の2年間の院生生活とその後を一つの例として記述いたします。

IDEC入学まで

学部生の時に旅行で訪れたモロッコで子どもが働く姿を目の当たりにし、学校教育と人々の暮らしの関係性に興味を持つようになり、IDEC(広島大学大学院国際協力研究科)へ入学しました。大学卒業後の1年間はフリーターとして勉強とお金を貯める生活をしていました。また、3つの大学の研究室を訪問してゼミの授業に参加し、教授と話しをさせて頂いた結果、IDECの試験を受けることに決めました。その理由はIDECの環境と、この教授の下で研究を進めたいという気持ちでした。

大学院は大学とは違い、授業よりも自分の研究が重要となります。この研究は教授の助言をいただきながら進めていくことになるので、研究を行う環境や教授とのマッチングを事前に確かめておくことは非常に重要であると考えています。しかし入学後、赴任して間もない日下部先生の存在を知りました。先生の研究方法が私の思い描いていた「人々の声を聞いて質的研究をする」というものであったので主指導教員の変更をお願いし、日下部ゼミでの研究生活が始まることとなりました。入試時に主指導教員として志望した教授はその後も副指導教員として大変お世話になりました。

 

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修士課程前期1年目

1年目は、IDECの授業を受けると同時に、モロッコの教育事情だけでなく文化や経済など幅広くモロッコの情報を集める作業を行いました。日下部先生とは1か月に1回のペースで面談を行い、情報収集の報告や今後の研究のスケジューリングについてアドバイスをいただきました。そして、秋ごろよりフィールドの選定を始めて2月に本調査の依頼も兼ねて10日間程度の予備調査を行いました。研究以外ではCICEにてインターンを約1年間行い、その活動の一環としてケニヤッタ大学との学生交流フォーラムの準備や運営、当日参加のためケニヤまで行った経験は、今後の国際交流や開発を考える上で非常に有意義なものとなりました。

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フィールドワーク

日下部ゼミではフィールドワークは必須です。モロッコに調査をお願いできるようなコネクションのなかった私はゼロから作る必要がありました。最初は友人を頼ったのですがうまくいかず、IDEC卒業生からJICAの方を、そしてそのJICAの方よりモロッコ人2名をご紹介頂き、いよいよフィールドワークへ行く切符を手に入れることができました。初めての調査経験だったことと、本調査の依頼のため本調査の前に予備調査に行くことにしました。JICAの方よりご紹介頂いたうちの1名の自宅でホームステイをし、小学校や現地のNGOを見て回りました。

質問紙の準備もできて、フライトの手配も済んで本調査は順調に進むと考えていました。しかし、本調査直前に先方から調査を手伝えないと断られてしまいました。どうすればいいのかとショックを受けましたが、そういったハプニングはつきものだと日下部先生からアドバイスをいただき、JICAの方にご紹介頂いた2名目の方を頼って、現地にてフィールドの選定を再度行いました。ようやく、協力いただける村と通訳者を見つけることができ400名程度の村にて、世帯調査を行いました。

 

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修士課程前期2年目

少し話が前に戻りますが予備調査から帰国後、2年目の始めは就職活動に専念していました。研究を進めたい気持ちは強くあったのですが、新卒として日本の企業で経験を積みたいと考えていたので研究よりも就活に力をいれて過ごしました。6月ごろに内定をいただき、その後すぐに本調査の準備に再びとりかかり9月から10月の約2か月間、本調査を行いました。帰国後は論文をまとめる作業にひたすら集中し、提出までの3か月はあっという間に過ぎていきました。思い通りの考察ができず、時間に焦ってしまうことがありましたが、とても楽しい作業でした。

 

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卒業後、現在

卒業後は、国内外の学会や会議の運営をする日本の民間企業にて3年就業しました。現在はその仕事を退職し、来年からアフリカイスラーム圏にある大使館にて専門調査員として2年働く予定です。IDEC時代に出来た交流は現在も続いており、日下部先生を始め、同期やCICEの元研究員の方とはごはんに行ったり旅行に行ったり、またフィールドワークを実施した村へも定期的に訪問しています。

まだ準備段階ですが、村の主要産業である観光を活性するお手伝いも始めていて、近年旅行者数が増えている日本人の観光誘致や資料の日本語への翻訳等の手伝いを今後進めていく予定です。今後はモロッコだけでなく、イスラーム地域の教育と生活のつながりに関する知見を深め、またそれと同時にイスラーム地域の生活についてもっと多くの人に知っていただける機会を作ることに貢献していきたいと考えています。

 

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