プロフィール

2016年04月03日
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所属

広島大学教育開発国際協力研究センター・大学院人間社会科学研究科

研究履歴

私は大学院在学中より、バングラデシュの教育を中心に、比較教育学を専攻してきました。人口の8割が住む農村部の人々が、教育制度の中にいかに組み入れられ、ライフコースを変化させてきているのかについて研究を進めています。研究スタイルは、バングラデシュやインドの農村にでかけ、調査票を用いた標本調査結果をデータとして用いた、量的・質的分析が主で、1990年代後半から2000年代後半にかけた、200世帯ほどの追跡調査を完了し、現在も分析を進めています。また、科学研究費によるイスラーム教育改革の研究、さらに学術-NGO連携研究として、日本のNGOとインド西ベンガル州シリグリにあるNGOと連携し、人身売買を防ぐためのシェルター運営の研究なども行っています。

また、私が属する教育開発国際協力研究センター(CICE)のミッションでは、国連大学やアジア・アフリカの大学と連携して、発展途上国の学習改善システムモデル開発を中心的に関わっています。これは、アジア・アフリカ諸国の大学と共同で収集したフィールドデータを基に、現地で実践されている学校改善実践、学習成果改善実践を掘り起こし、内容と効果を分析、教育行政官、校長・教員、コミュニティの人々と協働で現地の教育改善概念に基づいた実践を継続し、効果や内省を共有、対話を続けていくプロジェクトです。現在そうした世界の研究者仲間と、オンラインにより、コロナウイルスによって教育制度がいかに変わったか、さらに現場での学びの質がどう変わったのか、ということについて研究を進めています。

このように現状では、基礎研究としての情報収集・分析から、応用研究としての教育改善アクションリサーチに至るまで、ベンガル語あるいは英語での調査が可能な南アジア、東南アジア、アフリカ諸国を中心に、現地の教育に貢献できるような調査を追求しています。さらに2018年度より、マダガスカルやニジェールなど、フランス語圏アフリカの調査も開始しました。また、NGOや現地の大学などと比較的強く結びつき、協働で研究を進めるスタイルも開拓しています。

ゼミへの所属と大学院への入学について

基本的に比較教育学、南アジア地域研究、イスラーム地域研究というキーワード、または近接領域で関心がある方は受け入れています。これまで当研究室で博士・修士の院生たちが進めてきた研究は以下の通りです。

修士

「国際教育協力プロジェクト終了後における自立発展性の研究―インドネシアのREDIPを事例として」(日本人〔男〕:資源系商社に就職)

「Factors Affecting Students’ English Achievement at Secondary Level in Bangladesh-The Comparative Study between Narayanganj and Bhola Sadar Upazila」
(バングラデシュ人〔男〕:バングラデシュ教育省に職場復帰→その後博士後期課程へ)

「モロッコ農村部における学校教育制度と村民のライフコース―エルラシディア県ハミリヤ村の女子教育に着目して」(日本人〔女〕:企業に就職後、在外日本大使館専門調査員に転職→その後、博士後期課程へ)

「バングラデシュ農村部における青年期女性の学歴取得の意義と性役割観の変容―ガイバンダ郡後期中等学校生徒を事例に」(日本人〔女〕:統計調査会社に就職)

「Proliferating English-Medium Schools in Bangladesh-Their Educational Significance among the ‘Clientele’」(バングラデシュ人〔女〕:博士後期課程に進学)

「華僑大学の機能変容と教育環境」(中国人〔女〕:博士後期課程に進学)

「インドネシアの西スマトラ州における日本語専攻大学生のビリーフに関する研究」
(インドネシア人〔男〕:インドネシアの国立大学教員として就職)

「インド タミルナードゥ州におけるEnglish Medium Schoolについての比較研究―社会的再生産理論との関連から」
(日本人〔男〕:経営コンサルタント会社に就職)

「現代カンボジア農村部の教育復興―ポル・ポト時代以降の史的検討」
(日本人〔女〕:神奈川県立高校教諭に就職、現在国立大学附属高校教諭)

「ネパールにおける教育開発政策が女性教員の性役割観に与えた影響に関する研究-カトマンズ盆地とカブレ・パランチョウク郡の比較」
(日本人〔女〕:日系航空会社に就職)

「パキスタンのシーア派マドラサにおける教育改革の研究―改革理念・要請・実践に着目して」
(日本人〔男〕:総合エレクトロニクスメーカーに就職)

「ザンビア共和国の基礎計算能力の獲得における言語的影響に関する研究」
(日本人〔女〕:医療系企業に就職)

「インド西ベンガル州NJP駅周辺で暮らすストリートチルドレンのNGOへの参加に関する意思に影響を与える要因―家族と共に生活を行うストリートチルドレンに着目して」
(日本人〔男〕:兵庫県小学校教諭に就職)

「バングラデシュのNGOにおける人身取引サバイバー支援の研究-教育的側面に着目して」
(日本人〔女〕:アパレル系企業に就職)

「English Teaching Education as Pesantren Reform in Rural Area and Urban Area:

Comparative Study between Pesantren Nazhatut Thullab and Pesantren Progresif Bumi Shalawat」
(インドネシア人〔男〕:インドネシアの国立大学教員として就職)

「Adult Basic Literacy and Lifelong Learning Programs for Empowering Individuals: A Case Study of Nepal」
(ネパール人〔女〕:帰国後、博士後期課程への進学準備中)

「Exploring Specific English Learning Skills Needed for Informatics Engineering Human Resources in Industry 4.0 Era in Indonesia: A Phenomenological Case Study」
(インドネシア人〔女〕:博士後期課程へ進学)

「Equal Delivery of Religious Education in Multi-Religious Public Schools of Indonesia: Examining Religious Inherency」
(インドネシア人〔女〕:博士後期課程へ進学)

博士

「The Rise of Private School Market and Parental Choice: Cases from Dhaka, Bangladesh and Delhi」
(バングラデシュ人〔女〕:の大学教員として就職)

「中国の文化遺産保護と住民参加に関する文化人類学的研究」
(中国人〔女〕:日本国内企業に就職→中国の大学教員として転職)

「Diversification of Qur’anic Schools in Banjarnegara Regency, Central Java: Comparative Study between Semi-Urban Rural and Remote Rural Settings」
(インドネシア人〔女〕:母国の高校教員として復職)

「A Study on Reformation Process of Qawmi Madrasas in Bangladesh: Focus on English Subject」
(バングラデシュ人〔男〕:バングラデシュ行政府に復職)

現在の研究室所属院生の研究

現在、博士後期課程院生が行っている研究は、「中国高等教育における華僑・香港・澳門学生に対するナショナリズム教育」、「インドネシアのインフォ―マティクスエンジニアリングにおける英語スキルの再構成」、「インドネシアの宗教内在性」、「エジプトのスーダン難民におけるスーダニーズネス」などです。博士課程では、研究の焦点をかなり絞って、長期にわたるフィールドワークを必要します。ただ、当研究室では修士課程といえども、これまで、「バングラデシュで中等教育の学歴を保有する女性」、「インドの低額費私立のイングリッシュ・ミディアム・スクール(英語を教授言語とする学校)の生徒、教師、授業」、インドネシア農村部で急激に増加した日本語学習者の学習レディネス」など、研究指導を行う中で、新しく調査すべきクラスタを見出し、積極的にフィールドに送り出しています。

当研究室で研究を進めてみたい場合、一度面談をしていただき、テーマがこちらで指導可能かどうか、また卒業後の進路などを考慮したうえで受験していただく形をとっています。入学に際して留意していただく点は、ゼミや授業が英語で行われるので、受講、発表、課題等に英語で対応できることです。TOEICやTOEFLにおける一定程度以上の点数を必要とします。また、修了までにフィールドワークを行い、一次資料を使って論文を書くことが強く推奨されます。論文の執筆自体は、日本語でも英語でも可能です。博士課程に進学する場合には、自分のフィールドについて教育のことを調査するのみならず、現地語や現地での生活等に通暁することを目指していただきます。

日下部の学歴・職歴・業績についてはこちら

http://seeds.office.hiroshima-u.ac.jp/profile/ja.8356035a0eb5c7a4520e17560c007669.html