国際開発学会春季大会にて優秀ポスター発表賞受賞 太田洋舟
在モルディブ日本国大使館専門調査員、広島大学大学院修士課程2年(休学中)の太田洋舟です。2022年6月18日に開催された国際開発学会第23回春季大会のポスターセッション(オンデマンドビデオ、及びオンラインQ&A)にて、優秀ポスター発表賞を受賞することができました。
発表のタイトルは『モルディブ共和国における「ムスリムネス」の多様性に関する一考察 ―首都マレ圏のスポーツ活動を行うムスリム女性に着用して―』で、修士論文とは多少異なる内容ですが、JICA海外協力隊時代から興味を抱いていたテーマであります。モルディブは国民の100%がスンニ派のイスラーム国家であり、女性のスポーツ参加はマイノリティと言わざるを得ない社会ですが、一部の女性は身体ラインが顕著化する服装で熱心にスポーツに打ち込んでいる現状もあります。そんな彼女らの「ムスリムネス(ムスリムらしさ)」の形成と変容に焦点を当て、12名のスポーツ活動を行うムスリム成人女性を対象にインタビュー調査を行ったのが本研究になります。
この発表を通じて学んだことは、インタビュー構成が固まらずとも、まずは1人目のインタビューデータを恐れず取りに行くこと、つまり、必要なデータを取らなければいけないという意識から脱却することです。質的研究の指南書の多くは、インフォーマントの回答に呼応する形でインタビュー構成・内容ないしリサーチクエッションですら変容していくと記載があり、文面上では理解していました。しかし、多忙な大使館勤務、文献レビューの遅れ、締切りのプレッシャーなどから、頭が凝り固まって前に進めない時期を経験しました。その解決策はシンプルで、まずはインフォーマントに直接会い、例えばスポーツ歴や困難に思うことなどを気軽に話し、深堀するべき点を見つけ、もう一度話を聞きに行けばいいだけのことでした。「研究は頭ではなく、心で行う。データは手ではなく、足で集める。」という日下部先生のモットーがあります。最近はオフィスワークばかりでやや籠り気味でしたが、本研究を通じてその心を取り戻せたと思います。また、今後は調査対象者を地方島在住のスポーツ活動を行うムスリム成人女性に拡大して、来年の国際開発学会での発表を目指したいと思います。 さて、7月と8月は1週間ずつ、アリフ・ダール環礁オマドゥー島という地方島にフィールドワークに向かいます。地方島ならではのモスクコミュニティから観えるイスラームと教育について、実際に足を運んで、人と会って、何を感じるか、という「感性」を大切にして調査に向かいたいと思います。